認知症の方の介護について

 

介護は安易なものではありません。それは、介護の経験がなくても分かることだと思います。定期的に排泄の介助を行わなくてはならなかったり、入浴にも体力を必要としますので、身体的な負担も大きいことは、介護従事者以外でも理解されていることかと思いますが、実は介護の大変さと言うのはそれだけに留まりません。

 

介護従事者の多くが悩まれる介護は認知症の介護ではないでしょうか。認知症は記憶の障害が生じますので、両親を介護している方でも、子どもの存在を認知することが難しい状況になります。

 

そのため、これまで育ててくれた両親から「お宅は誰?」などと言われることもありますし、認知症の種類によっては幻聴などが聞こえてきたり、物を盗られたといった、いわゆる盗られ妄想などが生じて傷ついてしまうこともあるのではないでしょうか。

 

福祉施設においては、認知症の方のこのような行動に加えて、帰宅願望が強いこともあり、対応に追われている施設も少なくはありません。

 

認知症の方は長い間施設にいたとしても前後の記憶はほとんどありませんので、スタッフの顔はぼんやりと覚えていても、なぜ自分が施設にいるのかなどを理解できない場合もあり、自宅に帰らなくては家族が心配する、お金を持っていないから宿泊費を支払うことが出来ないから帰らなくてはならないと混乱する方も多いと言えます。

 

特に、このような状態になられる方は夕方が多いことが特徴で、日が沈む前には帰らなくてはならないと不安になられる方も多いのです。

 

排泄の介助方法や入浴の仕方などは麻痺のある方に気を付けたり、といった点以外は同じような手法を行うので、慣れると介護は比較的スムーズになりますが、このような認知症の方の対応は答えがありませんので、ベテランの介護士であっても頭を悩まされることも多いと言えます。

 

人の気持ちというものは個々に異なりますので、声かけなども安心する方法は違います。残念ながらどのように対応をしても落ち着くことが出来ない方もなかにはいらっしゃいます。

 

それは、介護従事者にとっては悩みの種とされることも多いと思いますが、もしも認知症の入居者が自分の立場だったらと考えたら、相手の気持ちも理解できるのではないでしょうか。

 

例えば朝、全く知らない場所で目が覚めてご飯を提供されたり、知らない人と一緒にお風呂に入らされたらパニックになるのは仕方がないことだと思います。認知症の方はその混乱と毎日戦っているのです。

 

認知症の方の不安をゼロにすることは難しいのですが、楽にすることは出来ます。安心できるような声かけと、不安な気持ちを理解する気持ちが相手に伝えることが出来ると、不安は安心へと変わるかも知れません。